STATEMENT

県教組声明

「教職員多忙化解消アクションプランⅡ」に対する福島県教組見解

2021年2月10日
福島県教職員組合
中央執行委員長 國分 俊樹

 2021年2月5日、福島県教育委員会は「教職員多忙化解消アクションプランⅡ」を決定した。これは、2020年1月の文科省告示「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」をうけ制定した福島県教育委員会規則「福島県立学校に勤務する教育職員が業務を行う時間の上限に関する規則」に基づく公立学校の多忙化解消プランである。
 2024年6月の勤務実態調査までに県内教職員の時間外勤務時間を月45時間以下、年間360時間以下とすることを目標としている。教職員の時間外勤務時間の上限を盛り込んだ前記告示は20年4月から適用され、法的根拠を有している。本来であれば即刻、完全実施を求めるところであるが、子ども・保護者の理解も必要なことから、できるところから行って3年後を完全実施のタイムリミットと捉えたい。
 「プランⅡ」の内容は、今年度まで取り組まれていた現行「プラン」の理念を受け継いだものとされている。しかし、「プランⅡ」は、時間外勤務時間の縮減にコンプライアンス(法令遵守)の姿勢で真剣に取り組む必要があるにもかかわらず、緊張感に欠ける内容である。
 前記告示と平行して発出された文科省の文書(指針Q&A)には、労務管理に関する校長や教育委員会の責任がはじめて明文化された。「学校の管理運営一切の責任を有する校長や教育委員会は、教職員の健康を管理し働き過ぎを防ぐ責任がある」「服務監督者たる教育委員会は、学校の管理運営一切において責任を有するものであり、業務分担の見直しや適正化、必要な執務環境の整備に加え、教職員の勤務時間管理及び健康管理についても責任を有しています」「上限時間を踏まえた教師等の適切な働き方についての校長・教育委員会の責任は、こうした学校の管理運営に係る責任」等。教職員の勤務時間を適正化する一義的な責任が校長や教育委員会にあるにもかかわらず、責任主体としての強い意志が全体的に感じられない。
 例えば、中学・高校の時間外勤務時間増加の要因として考えられる「部活動の在り方」について、重点取組テーマの最初に位置づけられてはいる。しかし、中学校の上限時間は平日2時間であり、勤務時間内での指導終了は不可能である(休日3時間)。また、教員志願者の減少が社会問題化している小学校の対応に関してはほとんど触れられていない。小学校は中学・高校とは異なり、学級担任がほぼ全教科を担当している。1日に授業準備や諸事務処理を行う時間が約1時間程度しかなく、必然的に時間外勤務が必要になる。現状では教職員の時間外勤務によって多くの教育サービスが形成されているのが実情である。つまり、福島県の学校教育は教職員の時間外勤務が所与のものとして組み込まれているも同様の状態であり、それを改善する抜本的な視点が不足しているのである。
 福島県教組はこの間、「教職員の働き方改革を進める上で、時間外勤務の上限時間の早期条例化・規則化は必須」と主張してきた。各都道府県で次々と条例化、規則化される中、福島県教委は、約1年間、条例化も教育委員会規則への反映も行ってこなかった。ようやく、重い腰を上げた状態である。時間外労働が日常的に行われている学校現場において、この教育委員会規則への反映は大きな一歩である。
 そもそも学校現場が「ブラック職場」となってしまったのは、「給特法」の下、無定量の時間外労働が「残業時間」とは認識されず、超過勤務手当も出ないまま、教職員がワーカーホリック状態に陥ってしまったからである。今回ようやく時間外勤務の上限が設定された。とはいえ、月45時間、年間360時間以下の時間外勤務は「給特法」による無給の「ボランティア勤務時間」である。
 「教育職員の業務量の適切な管理」は、教育委員会と管理職が責任を持って行うものである。「アクションプランⅡ」からは、その認識が十分に汲み取れない。

 わたしたちは、今後、文科省告示を反映した県教育委員会規則が各市町村教育委員会でどのように取り扱われるのかを調査し、「教職員多忙化解消アクションプランⅡ」の問題点を明らかにするとともに、各学校で教職員一人ひとりが働きやすい職場環境を実感できるよう運動を強化していく。

問い合わせ:福島県教職員組合 書記長 瀬戸 禎子(℡:024-522-6141)